レストランを探した。美味しそうなパンを並べたカフェがあった。美味しそうな
すし屋さんがあった。美味しそうなポーランド料理のお店もあった。
しかし、なぜか分からないが、どの店にも入る気がしない。
諦めかけたとき、ふと、小さな店が目に入った。
様子をみていると、紙袋に入った食べ物を持った人たちが、次から次とお店から
出て来る。店の前にある看板を見ると、チョークで「スープ」と手書きしてある
のがわかった。ここはスープの専門店で、地元の人々には人気の店らしい。
ドアを開けて店内を覗くと、テーブルが10席ほどあったが、ちょうど二人連れ
の客が席を立ったので、われわれはそこに座った。カウンターには娘と思われる
女性が立っていて、奥の調理場では母親と思われる女性がせっせと働いていた。
母娘で切り盛りしているのであろうか。
何かを注文しようにも、言葉が全く通じないので、もじもじしていると、一番奥
の席に座っていた男性が、英語で助け舟を出してくれた。
おかげて、隣りと、その隣の席の人が食べていたスープが美味しそうだったので、
その二つを指さして、「あのスープと同じものをください」と頼むことが出来た。
加えて、パンも頼んだ積りだったが、それは通じなかったようだ。
娘さんが調理場からスープを取り、カウンターに並べた。われわれは、それを
受けとって、自分たちのテーブルに運んだ。
セロリやジャガイモなどが入った野菜スープ、もう一つは肉と玉ねぎなどが入った
トマト味のスープだったが、パンがなくても、これだけでお腹いっぱいになった。
スープは両方とも、ちょっとだけ酸っぱ味があるものの、何と日本人の口に合う
ことか、これはポーランドの料理なのかと不思議に思えるほどだった。
店内をチラッと見渡すと、ほとんどの客がスープだけを食べているようだ。
勤め人と思われる男性も女性も、カウンターでスープだけを買って、持ち帰って行った。
職場に戻って、皆んなでワイワイガヤガヤしながら、美味しく食べるのであろうか。
5月の寒風にさらされて冷え切った身体が、このスープを食べて、芯から温まって
きた感じがした。
再び、ローカル列車に乗って、グダンスクに戻る。
(「ポーランド旅行記」一覧)
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