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中谷剛さんは、その著書「ホロコーストを次世代に伝える~アウシュヴィッツ・ミュージアム
のガイドとして~」(岩波ブックレット、2007年刊)の中で、アウシュヴィッツから奇跡的
に生還したカジミエシュ・スモレンさんについて、次のように紹介している。スモレンさんは、
アウシュヴィッツ博物館の館長として30年以上にわたり貢献した。
  アウシュヴィッツで習得したドイツ語を駆使して、スモレンさんはドイツの若者
  たちを案内してきた。彼らの見学姿勢は、加害者としての問題意識があるせいか、
  真剣そのものだ。しかし、"ドイツ人"としての罪を背負ってしまう若者には、
  「君たちに戦争の責任はない。でも、それを繰り返さない責任はある」と語りかける。
  被害者の一人としてのスモレンさんの、やきしくも厳しい口癖だ。これはドイツ人
  ばかりに向けられる言葉ではない。
  この責任をどのように果たしていけばよいのか。人類の大きな課題である。
  (中略)
  収容所から生還した戦後、大学の法学部を辛業したスモレンさんは、ポーランド人民
  共和国のドイツ犯罪究明クラクフ地方員会メンバーとして、アウシュヴィッツSS隊員
  の摘発に従事した。
  涙を流しながら話を聞く訪問者に、スモレンさんはこんなことも言う。「そんなに泣か
  ないでください。ここで起きたことに悲しみや痛みを感じることも必要ですが、どうして
  こんなことが起きてしまったのか、落ち着いて考えてみることも大切です。将来、こんな
  ことが二度と繰り返されないためにどうしたらよいのか? と」。

中谷さんは、今回、3時間余りのアウシュヴィッツ強制収容所のガイドを終わって、最後に
われわれ夫婦を含む20名ほどの訪問客に対して、概ね次のような趣旨のことを語り掛けた。
  私は、ガイド役であって、教え役ではない。案内をしながら、多くのことを学んでいる。
  皆さんは、歴史に対する関心が強く、その問題意識を持っているからこそ、遠く日本から、
  高い飛行機代を払って、時間を掛けてまで、ここを訪ねて来られた。ある意味では、非常
  に恵まれた環境にある方々だと思う。
  帰国したならば、ここアウシュヴィッツ強制収容所で見聞した歴史上の事実を、知人・友人
  にお話ししてほしい、そして、更に多くの日本の人たちが、アウシュヴィッツ強制収容所を
  訪ねて来られることを願っている。

国立アウシュヴィッツ・ビルケナウ博物館のホームページは次のとおり。
http://auschwitz.org/en/more/japanese/
http://auschwitz.org/gfx/auschwitz/userfiles/auschwitz/historia_terazniejszosc/auschwitz_historia_i_terazniejszosc_wer_japonska_2010.pdf

(「ポーランド旅行記」一覧)
https://blogs.yahoo.co.jp/swl_information/folder/1147858.html?m=l